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大阪高等裁判所 昭和58年(ネ)2584号 判決 1985年4月26日

控訴人・附帯被控訴人 国

代理人 笠原嘉人 池口睦男 ほか六名

被控訴人・附帯控訴人 赤松まさゑ ほか四名

主文

一  控訴人らの本件各控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。

1  控訴人らは、各自、被控訴人赤松まさゑに対し、金二四五一万一八五三円、被控訴人長沢重子、同赤松雄子、同藤本稔子及び同西和子のそれぞれに対し、各金三〇六万三九八一円宛並びに右各金員に対する昭和五四年九月一五日から各支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  被控訴人らのその余の請求を棄却する。

二  被控訴人らの本件附帯控訴を棄却する。

三  訴訟費用(附帯控訴費用は除く。)は第一、二審とも三分し、その二は控訴人らの負担とし、その余の訴訟費用及び附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。

四  この判決は主文第一項1に限り仮りに執行することができる。

事実

控訴人らは、それぞれ、「原判決中控訴人の敗訴部分を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決、附帯控訴につき、「本件附帯控訴を棄却する。附帯控訴費用は被控訴人らの負担とする。」との判決(控訴人国においては仮執行免脱の宣言)を求め、被控訴人らは、「控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決、附帯控訴として、「原判決中被控訴人ら敗訴部分を取り消す。控訴人らは連帯して被控訴人赤松まさゑに対し金一七二二万五〇六〇円、被控訴人長沢重子、同赤松雄子、同藤本稔子及び同西和子のそれぞれに対し各金二一五万三一三三円宛並びに右各金員に対する昭和五四年九月一五日以降支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の主張は左記に付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

(控訴人国の主張)

第一国家賠償法三条一項所定の費用負担者について

一  本件補助金の性質等について

地方公共団体等が環境庁長官の承認を受けて、国立公園の公園事業の一部の執行者となつた場合(自然公園法一四条二項)、その執行に要する費用は国の負担ではなく、当該地方公共団体の負担となる(同法二五条)。しかし、国は、予算の範囲内において、政令の定めるところにより、公園事業を執行する都道府県に対して右費用の一部を補助することができると規定されている(同法二六条)。すなわち、右二六条に基づく補助金は、同法によつて地方公共団体の任意に任せられた公園事業の実施の開始について、補助金の交付のあり得ることを法律上明らかにしているもので、地方財政法一六条補助金のうち法律補助と称せられるものである。

したがつて、本件補助金は、控訴人国が相控訴人三重県(以上「県」という。)に対し、本件吊橋の補修工事のために、自然公園法二六条に基づき交付したものであるから、右一六条補助金に当るものということができる。

二  国家賠償法三条一項にいう公の営造物の設置管理費用の負担者について

1 国家賠償法三条一項所定の営造物の設置管理費用の負担者(以下「費用負担者」という。)として、法律上当該営造物の設置管理費用を負担すべきものとされている者(以下「費用負担義務者」という。)を含むことは争いがないところ、それ以外に右一六条補助金を交付した国も費用負担者に該当するかについては、最高裁判所昭和五〇年一一月二八日判決があるが、同判決は、右補助金を交付した国が国家賠償法三条一項所定の設置費用の負担者に該当するかどうかを判断するに当つて、右設置費用の負担者として、右費用負担義務者のほか、「この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的にはこの者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められる者であつて、当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止しうる者も含まれると解すべきである」とし、続けて、「公の営造物の設置者に対してその費用を単に贈与したにすぎない者は同項所定の設置費用の負担者に含まれるものではないが、法律の規定上当該営造物の設置をなしうることが認められている国が、自らこれを設置するにかえて、特定の地方公共団体に対しその設置を認めたうえ、右営造物の設置費用につき当該地方公共団体の負担額と同等もしくはこれに近い経済的な補助を供与する反面、右地方公共団体に対し法律上当該営造物につき危険防止の措置を請求しうる立場にあるときには、国は、同項所定の設置費用の負担者に含まれる」と判示した。そして、このように解する根拠として、国家賠償法三条一項の立法趣旨が、<イ>被害者たる国民が賠償の責に任ずべき者の選択に困難をきたすことを除去すること、<ロ>危険責任の法理に立つて、被害者の救済を全からしめようとすることにあることをあげている。

2 右判決は、国が前記一六条補助金を交付した場合に国家賠償法三条一項にいう費用負担者に該当するための要件として、<1>補助金の交付額が、費用負担義務者(地方公共団体)の負担する額と同等またはこれに近い額に達していること、<2>実質的に当該営造物による事業を共同執行していると認められること、<3>当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止し得る者であることをあげているということができる。

そして、右のように解する根拠を前記<イ>、<ロ>の事由に求めているのであるが、その理由を考察するに、右<イ>の事由からいい得ることは、被害者たる国民が補助金を交付した国と当該営造物の設置管理者とを誤認する恐れがある程に、右国が設置管理に関する行政に実質的に関与し、設置管理者と同一の立場にあると評価することができる場合でなければならないということであり、また、右<ロ>の事由からいい得ることは、右国は、危険物である営造物の設置管理について、右設置管理者と同一の立場でこれに関与し、その危険を防止し得る場合でなければならないとの考え方に立つていると解することができる。

このような理解のもとに費用負担者に関する右<1>ないし<3>の要件をみてみると、右<1>の要件は、補助金の額(割合)の面からみて、また、<2>の要件は、当該営造物事業の執行面からみて、さらに右<3>の要件は、当該営造物の瑕疵による危険回避措置行為の面からみて、いずれも設置管理者(費用負担義務者)である地方公共団体と同一の立場にあるといい得ることを要求しているものと解するのが相当である。

三  本件補助金の交付と国家賠償法三条一項の費用負担者について

1 控訴人国が県に対し、本件吊橋の補修のために本件補助金を交付したことをもつて、国家賠償法三条一項所定の費用負担者に該当しないことは、既に述べたとおりであるが、右に加えてさらに右<1>ないし<3>の要件について項を分けて詳述する。

(一) 右<1>の要件について

控訴人国が県に対し、本件吊橋の補修のために県が支出した補修費用の四分の一(全体の補修費用の五分の一)にすぎない補助金を交付したことをもつて、県の負担すると同等またはこれに近い額を支出したといい得ない。そして、ここで控訴人国がさらに強く主張したいことは、費用負担者に該当するかどうかの判断に当つて、補助金額(割合)が軽視されるべきではなく、右金額が県と同程度であることが重要であり、それは前記最高裁判所判決のよつて立つ根拠からして明らかといわなければならないということである。

加えて、県の支出額に対する補助金額の割合を判断するに当つて考慮すべきことは、当該補助金の性質についてである。すなわち、本件に則していえば、自然公園法二六条に基づく国の補助金は、前記負担金、委託金と異なり、当該公園事業執行者に対する財政援助、奨励の目的で交付される恩恵的、援助的なものであつて、交付が義務づけられていない任意のものであるということである。

このように、恩恵的、援助的性質の強い本件補助金の場合には、その交付行為自体からして当該事業に対するかかわりの程度が低いのであるから、その交付割合が県の支出額に比し高いことが必要であり、本件のごとく県の支出額の四分の一にすぎない場合には、右<1>の要件を満たすものでないことは明らかといわなければならない。

(二) 右<2>の要件について

本件吊橋は、昭和三四年県(企業庁)が宮川第三発電所堂倉取水堰堤工事の際、作業用吊橋として設置したもので、その設置に当り厚生大臣は、公園事業として承認したこともなければ、控訴人国が補助金を交付したということもなく、その後ももつぱら県が管理しているものである。とりわけ県は、昭和四二年度、同四八年度、同五〇年度、同五三年度の四回にわたつて本件吊橋を補修しているところ、控訴人国は、右補修のうち、昭和四二年度の一回のみ補修費の一部について本件補助金を交付したのである。このように控訴人国が本件吊橋に関与したのは、本件吊橋設置後、昭和五四年の本件事故に至るまで、後にも先にも右の一回きりであり、その額も四回の総補修費に比し五分の一という低割合の金員を交付したにすぎないのである。

右の事実関係から明らかなごとく、控訴人国は、本件吊橋の設置に何ら関与せず、その後の管理についても補修費の一部について一回のみ補助金を支出したにすぎず、右交付時から本件事故時までに一二年もの年月を経過しているのであるから、前記<2>の要件である本件吊橋による事業を県と共同して執行しているとの関係にあるとは到底いうことはできない。

ちなみに、前記最高裁判所判決における事案では、営造物の設置自体を国が承認し、設置費用の半額に相当する補助金を交付し、その後の改修にも度々相当の補助金の交付を続けているのであり、本件の場合とは全く異なる事案であることを注意すべきである。

(三) 右<3>の要件について

控訴人国が唯一関与した本件補助金の交付は、手摺線、吊桁、縦桁、横木、敷板等の補修目的で申請がなされ、これに対する交付決定に基づいて交付され、実績報告を受けたにすぎないものであつて、本件事故の原因となつたメーンワイヤーについては、控訴人国は本件補助金交付の手続上何ら関与しておらず、また、その後の昭和四八年、同五〇年、同五三年の補修工事は、県独自でなされたため、控訴人国が関与する余地は全くなく、さらに県が昭和四八年に民間業者に委託して独自に実施した本件吊橋の安全点検調査についても、また、同調査結果に基づき、昭和四九年三月、県が宮川村、大台警察署と共同で実施した通行制限の警告板の設置にも控訴人国は関与する余地が全くなかつた。

右のように、控訴人国が本件補助金交付対象である本件吊橋の補修結果について、それが申請どおりなされたかどうかについての結果報告を受け、審査した後は、県が責任をもつて本件吊橋に関する事業を執行するというのが自然公園法上の立前であるから、県の執行行為を越えて控訴人国に対し、右工事及び調査等に関与することを求めることは著しい困難を強いるものといわなければならない。

よつて、控訴人国は、本件吊橋に関する事業において、本件吊橋の瑕疵による危険を効果的に防止し得る地位にある者ということはできない。

また、右のような事実関係に加えて、本件補助金の交付時(昭和四二年度)から本件事故発生時までには一二年もの年月が経過しているところ、国家賠償法三条一項の立法趣旨が危険負担の法理にあることからすると、設置管理者である県が国家賠償法二条に基づき賠償責任を免れ得ないことはともかく、単に低額の本件吊橋の補修費を交付したにすぎない控訴人国が、本件事故発生時においても、右設置管理者である県と同一の立場で本件吊橋の管理に関与し、その危険を防止し得る地位にあると断ずることは著しく不合理であり、本件の場合において、本件事故時には控訴人国は右<3>の要件を満たす地位になかつたものというべきである。

以上の次第で、本件補助金を交付した控訴人国は、右<1>ないし<3>の要件のいずれにも該当するものではないから、国家賠償法三条一項所定の費用負担者には当らない。

四  控訴人国は国家賠償法三条一項の費用負担者に該当しない旨の主張について

1 原判決は、本件における控訴人国の費用負担割合が「せいぜい控訴人県の四分の一にとどまつている」と判示し、右<1>の要件の充足性の希薄なことを指摘しながら、右<2>、<3>の要件の充足について、右最高裁判所判決の判旨をほぼそのまま引用した上で「自然公園法二六条の補助金交付の主たる目的は、国が本来執行すべき国立公園事業を現に執行しまたは執行を予定している都道府県に対し、同法の見地から助成の目的たりうると認められる事業の一部について補助金を交付することにより、その財源的裏付けを確保するとともに、その執行を義務づけ、かつ、その執行が国立公園事業としての一定水準に適合すべきであることの義務を課することにあり(明治三〇年四月一日法律第三七号「国庫ヨリ補助スル公共団体ノ事業ニ関スル法律」、昭和三〇年八月二七日法律第一七九号「補助金に係る予算執行の適正化に関する法律」、昭和四三年五月二七日厚生省発国第一一八号厚生事務次官通知「国立公園及び国定公園施設整備費の国庫補助について」参照)、当該事業が国民の利用する道路、施設等に関するものであるときは、その利用者の事故防止に資することを含むのは明らかである(国立公園及び国定公園施設整備費国庫補助金取扱要領)。」として、控訴人国が本件吊橋の設置管理費用の負担者たることを免れ得ないとの結論を導いている。

しかしながら、右判示は、掲記の法令等の誤つた解釈等に基づいてなされたものであり、また、右最高裁判所判決の事案が当該かけ橋を含む周回路の設置に際し、国が費用の半額を補助したというものであり、当該事故は、「そのかけ橋の山側に転落防止施設を設けていなかつた」という瑕疵に基因して発生したというものであつて、本件(ちなみに、本件吊橋の手摺線等の補修費用の一部について補助金を交付したが、「その後、右補助(補修)対象外であつたメーンワイヤーに瑕疵」が生じた結果、右補助金交付後一二年もの歳月を経た時点で発生した事故である。)とは事案を異にするものである。原判決は右最高裁判所判決の判旨を本件にそのまま引用することによつて、右<2>、<3>の要件を充足する旨判示したことは誤りであるというべきである。

2 原判決は、右判旨の根拠として、まず、明治三〇年四月一日法律第三七号「国庫ヨリ補助スル公共団体ノ事業ニ関スル法律」を掲げるのであるが、右法律は、戦前においては内務省の所管であつたが、新憲法のもとではその所管庁も不明となり、適用されたこともないというものであつて、右<2>、<3>の要件が「実質的」なものであることを要するとする最高裁判所判決及び原判決の判旨に照らしても、到底その根拠となし得ない法律である。また、仮に、右法律が正当な効力を有するものであるとしても、その一条において、国が補助金を交付したときは、事業の設計施行管理及び経費の収支の方法等につき変更させることができ、場合によつては直接施行することができると規定するところは、後記「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(以下「補助金等適正化法」という。)の規定するところと同様に、補助金が交付目的に沿つて適正に執行され、もつて当該事業が適正に執行されることを確保することにあると解すべきであり、右権限の及ぶ範囲も補助金の対象事業に限られ、右管理も「施行管理」であつて、事業完了後の保守管理を含まず、それは補助金の交付を受けた者の責任において管理することとされているのである。

次に、原判決は、右判旨の根拠として、補助金等適正化法を掲げる。確かに、右法律によると、補助金交付決定がされると補助事業者等(本件の場合は都道府県)は当該事業の執行義務を負い(三条二項、一一条一項)、事業が完了したときは、実績報告をする義務を負い(一三条、一四条)、国は補助事業者等に対し、遂行命令(一三条一項)や是正のための措置(一六条一項)をとることができるが、これらは交付された補助金が目的に従つて適正に使用されることを確保するための規定であり、補助金の交付により国の補助事業者等に対する監督権限が補助金の交付目的から離れて特に付与される訳ではない。これを換言するならば、国が都道府県等の補助事業者等に対し、補助金を交付したことから、補助事業の実施完了後に存在する補助事業の対象となつた管造物等の管理に対する国の規制権限等の付与までも規定するものでないのである。

以上のことは、前記厚生事務次官通知においても同様である。

さらに、原判決は、自然公園法二六条の補助金の交付が「当該事業が国民の利用する道路、施設等に関するものであるときは、その利用者の事故防止に資することを含む」と判示し、その根拠として、国立公園及び国定公園施設整備費国庫補助金取扱要領を掲げる。確かに、補助の基本方針を定める右取扱要領第1によると、補助金の交付の対象となる事業の要件として、「利用者の事故防止に資するもの」であるとの方針に合致する施設の整備であることを掲げている。しかし右要件は、自然公園法に基づく補助金の交付目的が適正なものであることを保証するためのものであるにすぎないし、また、それ以上に当該補助金の交付の対象となつた営造物の瑕疵(特に、右補助金の交付後に発生した瑕疵)による危険の防止に対する配慮を規定したものではないのである。

3 以上の次第で、控訴人国が県に対し、本件補助金を交付することによつて、県に課した義務は本件補助金が適正に執行されることであり、県が右補助金をその交付目的に従つて何らの法令に反することなく適正に執行したことが明らかである以上、前記諸法令等を根拠に<2>、<3>の要件が充足されるとすることはできないというべきである。そして、右<2>、<3>の要件が「実質的」なものであることを要することからすると、本件においては、事実に即した検討、判断が加えられなければならないのである。

さらに、控訴人国が県に対し、本件補助金を交付することによつて、前記のような義務またはその他の何らかの義務を県に課したことを前提に検討を加えてみるに、県に課せられた右義務は、昭和四二年度に交付された本件補助金によつて実施される本件吊橋の補修事業に限られるものというべきであり、それを越えて、その後継続して本件吊橋の補修・点検を義務づけたものでないことは明らかである。ちなみに、控訴人国が県に対し、右のような義務を課したのであれば、その義務を適正に遂行するための財源を確保させるために補助金を交付することも考えられないではないところ、自然公園法二六条による補助の対象としては右のような補助金は含まないこととされているのである(自然公園法二六条、同法施行令二二条参照)。

もつとも、県は、国立公園事業の執行者として、必要に応じその安全性確保のために独自の補修・点検等をなすべきは当然というべきであるが、それをもつて、本件補助金が交付されたことによつて控訴人国から義務づけられたものということができないことは明白である。しかして、本件吊橋が昭和四二年度に交付された本件補助金による補修工事実施当時、本件吊橋のメーンワイヤーに瑕疵が存しなかつたことは明らかであるところ、その後、年を経ることによつて、右メーンワイヤーに瑕疵が生じ、本件事故に至つたとしても、本件吊橋、とりわけ右メーンワイヤーの管理との関係において、控訴人国が前記<2>、<3>の要件に該当するものとはいえず、また、右メーンワイヤーに生じた瑕疵と本件補助金の交付との間には因果関係は存しないものというべきである。

4 よつて、控訴人国は、いずれにしても、本件事故に関し国家賠償法三条一項所定の費用負担者に該当するものということはできないのである。

五  次に国家賠償法三条一項所定の費用負担者が賠償すべき損害の範囲について検討し、被控訴人ら主張にかかる損害が控訴人国において賠償すべきものに属さないことを主張する。

1 費用負担者が賠償すべき損害の範囲について

国家賠償法二条一項と三条一項の規定を形式的、並列的にみるならば、公の営造物の設置または管理に瑕疵があり、損害が発生した場合、右設置・管理者は、右瑕疵と相当因果関係のある損害を賠償すべき義務を負い、あわせて右設置・管理費用を負担した、いわゆる費用負担者は、右と同一の損害を賠償すべき義務を負う旨規定しているものと解することができる。

しかし、費用負担者とされる者が負担する費用には、金額、対象、時期等様々な場合があるところ、そのいずれの場合にも、右営造物の設置・管理の瑕疵による損害である限り、これを賠償する責を負うと解することは、著しく合理性を失することとなる。

例えば、営造物の一定箇所を補修するための管理費用を負担した場合、その後長年月を経過した時点において、右補修箇所とは異なる点の瑕疵によつて損害が発生した事例を考えてみる。この場合、管理費用を負担した者は、右損害を生ぜしめた右営造物の瑕疵に対し、何らかかわりがあるものではなく、いうなれば、寝耳に水のような状況下において、損害賠償責任を負うこととなるのである。すなわち、費用負担者としては、当該費用負担の対象部分以外の営造物の部分については、その管理に全く関与していないのであつて、右部分に瑕疵が存在したとするならば、それはもつぱら設置・管理者の手落ちに基づくものであり、また、費用負担後相当期間経過した後は、当該営造物の腐朽、損傷等に対する補修等は、もつぱら当該営造物の設置・管理者の判断と責任においてなされるほかないものであるから、その時点における瑕疵も右同様設置・管理者の手落ちによるものというべきであつて、費用負担行為とは何ら関係のないところで生じた瑕疵であり、損害であると評価することができるのである。

さらに、費用負担者が費用を負担した後、当該営造物の存する限り、いわば時間的に無制約にその瑕疵に基づく損害賠償義務を負うとされ、あるいは費用負担の対象となつた部分と全く無関係な部分の瑕疵に基づく損害についてまで、広く損害賠償義務を負うとされるならば、右費用負担者は、何ら営造物の維持管理に関与せず、その存在すら既に認識を乏しくする程になつた時点で、かつ、費用負担の際にすら何ら関与しなかつた部分の瑕疵に基づく損害について、従前において費用を負担したという一事をもつて、突然多額の損害賠償義務を負わせられることとなるのである。このような結果は、右費用負担者の意思に反し、予見の範囲を甚だしく越えるものであり、公平の原理にもとるものというべきである。

以上のように事例にみられる結論の不合理性と国家賠償法三条一項の立法趣旨が危険責任の法理に立つものであることを考慮するとき、費用負担者が営造物の設置・管理の瑕疵に基づく損害賠償義務を負う範囲は、危険物である営造物に対し、費用負担することによつてかかわりをもつた限度、換言するならば、費用負担行為と相当因果関係を有する損害についてであるということができる。

2 控訴人国が、本件吊橋の補修費として交付した補助金と本件損害との間には、相当因果関係が存在しない。

本件吊橋は、昭和三四年、県によつて設置され、以来県が管理してきたものであるところ、控訴人国が右吊橋の管理に関与したのは、昭和四二年度に右吊橋の補修費の一部として本件補助金を交付した一回のみであり、右補助金は、手摺線、吊桁、縦桁、横木、敷板等の補修目的で交付され、本件事故時に瑕疵の存在したといわれるメーンワイヤーについては、右補助事業の対象とされておらず(現実にも右補助金が右メーンワイヤーの補修に使用された事実はない。)、その後においても控訴人国は、右メーンワイヤーの補修等管理行為に対し、何ら関与もしていない。本件事故は、右補助金の交付から一二年も後の昭和五四年に発生したものである。右補助金交付後に実施された右吊橋の三度にわたる補修工事は、県が自らの費用をもつて独自になしたものであつて、控訴人国が右補修工事に関与する余地は全くなかつた。

以上の事実関係からすると、控訴人国は、本来吊橋のメーンワイヤー以外の構造部分の補修について、本件事故の一二年も前に、ただ一度だけ補助金に交付して関与したにすぎず、その後は設置・管理者である県がその責任と判断において、現実に管理行為を行つてきたものであるから、本件吊橋のメーンワイヤーに瑕疵が存在し、そのために本件事故が発生したとしても、それは、本件補助金交付に基づく管理行為による瑕疵ではなく、その後に県において実施され、またはされるべきであつた管理行為の瑕疵に基因するものであるというべきである。

したがつて、被控訴人らの主張にかかる本件事故による損害と控訴人国の本件補助金交付との間には、相当因果関係は存在せず、この点においても控訴人国が本件事故による損害賠償責任を負うものということはできない。

第二被控訴人らの主張に対する反論

被控訴人らは、「補助金交付の趣旨、目的、役割」が前記最高裁判所判決の事案と同じであるから、被害者保護の観点から本件においても控訴人国が費用負担者と認められるべきである旨主張する。

しかし、右のような立論が成り立つのであれば、仮に一円でも自然公園法二六条の補助金を地方公共団体の設置、管理する営造物について交付したとすれば、「補助金交付の趣旨、目的、役割」は常に同じであるから、控訴人国は、費用負担者として国家賠償法上の責任を負うことになりかねず、かかる立論は、前記<1>ないし<3>の厳格な要件を立てて費用負担者についての安易な適用範囲の拡大を阻止しようとした最高裁判所判決と相反するものというべきである。また、被害者保護の観点からみても、当該営造物の設置、管理者たる地方公共団体が営造物責任を負うのであり、かつ、右公共団体には財政的能力があるのが通常であるから、被害者の救済としてはそれで十分であり、費用負担者についての安易な解釈論の拡張を許す必要はないのである。

(控訴人らの主張)

第一県の本件吊橋の管理瑕疵の不存在について

一  原判決は、<1>大杉谷線道路が一泊二日の登山コースとしては比較的楽な登山というよりはハイキングというべきコースであり、スカートやヒール靴をはいたままの登山者もあること、多数の登山者が訪れること、<2>通行制限の警告板の存在にもかかわらず、本件吊橋を含む大杉谷線道路の各吊橋においては登山者の間で五名以上もの人数で渡橋することが常態化していた旨各認定し、右事実認定のもとに多人数による同時渡橋が予見可能であつたとし、本件吊橋は耐荷重の著しい低下により危険な状態にあつたのだから、県は同時に多人数の登山者が本件吊橋を渡橋することによる危険を安全に防止するため、メーンワイヤーの交換、通行禁止、または監視員の配置等により確実性のある具体的措置を講ずべき義務があつたのにこれを怠つたものであり、本件事故は該管理瑕疵に基づく本件吊橋の安全性の欠如に起因すると判示している。

二1  まず、右<1>の事実認定に検討を加えるに、本件吊橋に通ずる大杉谷線道路は、切り立つた岩壁を抱くように進まねばならぬ箇所や急坂の多い険峻な登山道であり、その高低差は一六九五メートルの日出ヶ岳山頂から登山口である乗船場の二八〇メートルまで約一四〇〇メートルにも及び、踏破に要する標準所要時間は全行程で一一時間二〇分であり、その険峻さの故に年間五、六件の転落遭難事故が発生しているのである。

したがつて、原判決が大杉谷線道路をもつて、「登山コースとしては比較的楽」であるとか、「登山というよりハイキングというべきコースである」とか、「スカートやヒール靴をはいたままの登山者もあり」、それが一般化しているかのような認定をしているのは事実を誤認したものといわなければならない。

このことは、亡赤松哲男(以下「亡哲男」という。)の所属した「山と友の会」では、本件登山に際し、登山経験の豊富な総リーダーである出来久生ほか一名が本件登山の一週間前に下見をし、吊橋の渡り方のリハーサルを行い、当初参加希望者が八〇名以上で、散策程度に考えている人もいたので、参加者ミーテイングの中で現地調査や危険箇所を報告し、参加者の心構えを話して本件登山に参加するには不適格な三〇名余を参加させず、また、同会が本件登山に当つて作成した甲第七号証によれば、「大台ヶ原は誰でも気軽にいける散策コースだが、大杉谷は非常にきびしい登山コース」、「岩と絶壁が多い、油断できない危険な所、各所にある」、「かるい散策コースでは決してない。最もきびしい健脚コースです」として大杉谷登山路の険峻さを示していることからも明らかなところである。

2  次に、右<2>の事実認定について検討を加えるに、原判決も明示するごとく検甲第三号証は本件事故の一四年も前である昭和四〇年四月に、また、同第一号証は昭和四八年八月にそれぞれ撮影された写真であつて、右写真はいずれも県らが本件吊橋等の安全調査結果に基づいて通行制限に関する警告板を設置した昭和四九年三月以前のものであるから、右警告板設置後もこれに反して五名以上の登山者が同時渡橋することが常態化していたと認定すべき証拠とするには不適当なものであり、また検甲第四号証は、その被写体の態様からして明らかなごとく、いわゆる登山記念写真として撮影したものであつて、登山者の渡橋中のものではなく(ちなみに、記念写真を撮影する際には、同行者全員が被写体となることは通常経験するところである。)、いたつて特殊な写真というべきであるから、右写真をもつて前記事実を認定することには無理があるというべきである。

かえつて、甲第三号証の二(二枚目)によると、名古屋の登山者の「私の行つた時には、ちやんとみんな行儀よく順番待ちしていて、一人ずつ吊橋渡つていましたよ。」という談話が掲載されており、このことからすると、警告標識を守るという、登山をする者の常識を踏まえた登山者の方が多数派であつたことが容易に窺われるところである。

また、原判決は、県の設置した警告板の記載が「荷重によるワイヤーの破断の危険を警告する趣旨の表現とは必ずしも看取し難い」とするが、本件のごとき険峻な登山道にかかる吊橋に「通行制限」の表題のもとに一人ずつゆすらないで静かに渡るように記載されていれば、登山者としてはワイヤーの破断まで具体的に予見しなくても、吊橋の耐久力に制約があることは容易に認識し得るはずであつて、右の判断は理由のないものであり、右判断と同旨の証人出来久生及び同大木孝子の各証言は、右警告文言を揺れることに対する注意であると思つたとする証言内容自体について、合理的な説明もなし得ていないことからして、これを措信することには問題がある。

3  以上の次第で、原判決が県による本件吊橋の管理義務違反を導き出した前提となる事実の認定に誤りがあるから、右の点に関する判断は失当というべきである。

三  ところで、登山において、設置されている標識、警告等を無視することは死に直結しかねない危険な行為であり、これを遵守することは登山の初歩というべきである。

例えば、装備を十分にするようにとの警告を無視し、軽装備で入山し、途中天候の異変のため遭難し一命を落すなどということはよく見聞するところであろう。このことは、コースの定められていない専門的登山のみでなく、一般人が参加できる登山においても当然いい得ることである。そして、登山者が登山の基本ルールというべき標識、警告等を遵守しないことによつて遭難した場合は、登山者の自損行為というべきである。国及び地方公共団体は、右のような登山者の自損行為が生じないよう一般的忠告を与えることはあるとしても、それを予測して個別的、具体的な危険防止措置をとるべき義務はない。

原判決は、本件吊橋が落ちたことの結果として、本件吊橋のメーンワイヤーを交換すべきであつたと指摘するものであるところ、本件においても、県環境保全課において本件吊橋を含む七か所のかけ換予算の要求をしたが、財政上の理由からかけ換がなされなかつたものであるとの事実からも分るように、現実には当該地方公共団体の財政上の制約を受けざるを得ないから、たやすく実行できるものでないのであり、また、原判決の指摘する監視員の配置についても、本件吊橋が人里から遠く離れた深山幽谷の中にあり、前記のごとく険峻な登山道の真只中に位置し、常時人を配するなどは著しく困難といわざるを得ないのである。さらに、原判決指摘の通行禁止措置についても、本件吊橋は荷重上の制約はあるものの、通行を全面的に禁止すべきまでの状態にはなく、一人ずつの通行制限のもとに登山者の利用に供することは可能であつたのであるから、右のような禁止措置をとる必要まではなかつたものというべきである。

要するに、登山者の安全と日本でも有数の大杉谷の渓谷美を楽しみたいとの国民の要望を満足させるためには、登山者が管理者の設置した標識、警告等を遵守するという登山のマナーがまず第一に必要とされ、重視されるべきである。本件の場合においても、警告板の記載に従い一人ずつ渡橋していたならば発生しなかつた事故であることを強く思い起すべきである。

四  本件事故の原因は、人数制限を無視して同時に多人数が渡橋したことにある。本件事故当日、右事故が発生するまでに約一〇〇名以上の登山者が本件吊橋を渡り、何ら事故は発生しなかつたこと、しかるに本件事故発生時に本件吊橋を渡つていたのは、「山と友の会」の会員以外の土井ほか一名及び右会の会員である亡哲男ほか七名(この点については当事者間に争いがない。)であつた。したがつて、本件事故発生時までに渡橋した登山者らは、少なくとも一〇名以上の者が同時に渡橋しなかつたがゆえに本件メーンワイヤーが破断しなかつたのであるが、亡哲男らは、会員以外の者が渡橋しているのを無視して、あえて一〇名以上の者が同時に渡橋したがゆえに本件メーンワイヤーが破断したのである。

一名ずつ渡橋するようにとの警告板が設置され、これを十分認識し、三名ずつ渡橋することを決めていた(この決定が守られていたならば、本件事故は発生しなかつた。)亡哲男を含む「山と友の会」の会員がこれを無視して一〇名もの者が同時に渡橋したことこそ責められるべきであり、このことは「山と友の会」が年間多数の計画を立てて実行し、経験豊富な指導者と多数の会員を擁する登山団体であることを考慮すると、なお一層にその感を強くするのである。

以上の次第で、本件事故は、亡哲男を含む「山と友の会」の会員らによつて起された自損行為にも等しい行為に基因するものというべきであり、決して本件吊橋の管理瑕疵に基因するものではない。

第二過失相殺について

仮に、控訴人らに賠償責任が認められるとしても、本件事故は、県が吊橋の安全点検調査の結果に基づいて宮川村、大台警察署と共同で設置した「一人ずつ渡るように」と表示した通行制限の警告板の警告と、自己の所属する登山グループのリーダ上地明生の「三人ずつ渡ろう」という指示をそれぞれ無視し、既に自己の前方に六人が渡橋中であるのを認識しながらあえて渡橋した亡哲男の過失が、その直接原因となつているものであるが、これに加えて、亡哲男と同時に渡橋した「山と友の会」の会員にも亡哲男と同様の過失があるというべきところ、右会の会員らは一団体の会員として同一意思のもとに渡橋している本件のような場合には、亡哲男を除く右会員の過失も被害者側の過失として考慮すべきである。

そうすると、亡哲男の過失割合は、少くとも五割を越えるものというべきである。

原判決は、過失相殺の判断においても、第一に警告板の文言が端的にメーンワイヤーの破断の危険を表現していないこと、第二に大杉谷登山者の間では、吊橋の通行制限を無視することが日常化していたこと、第三に本件事故当時、本件吊橋の渡り口付近が渡橋の順番待ちの人々で混雑状態にあつたことを斟酌して亡哲男の過失を過少に評価している。「通行制限」の表題のもとに県、大台警察署、宮川村の三者連合で「一人ずつゆすらないで静かにわたつて下さい」との表示があれば、メーンワイヤーの破断の危険まで具体的に予測しなくとも、少くとも吊橋の耐久力に何らかの制約のあり得ること、それが通行制限(それも「一人ずつ」との限定)を必要とするものであること、前記の三者連名である以上、安易に見すごすべきものでないことは通常人であれば容易に推測できるはずであり、それゆえにこそ、「山と友の会」の会長ら指導者においても渡橋人数を制限したと考えるのが相当である。よつて、右第一の点をとらえて亡哲男の過失割合を軽減するのは不当である。

次に、第二の点については、仮に登山者の中に警告板を無視して多人数による渡橋を行う者がいたとしても、それは赤信号を無視して道路を横断する人がままある場合に、これにならつて信号を無視した結果、交通事故に遭遇したのと同様であるというべきであり、この場合の責任は信号無視をして横断した者にあるのであつて、信号設置者や道路管理者の責任を云々することはできない。

よつて、警告を無視するものが他にいるからといつて、該事実をもつて亡哲男の過失割合を軽減することは失当といわざるを得ない。

さらに、第三の点については、そもそも多数の初心者を含む「山と友の会」の行程に無理があつたのであり、また、他に渡橋待ちの人がいるからといつて、警告や自己の所属する会の申し合わせによる渡橋人数を無視してよいはずはないのである(どうしても先を急がねばならない事情にあるのならば、谷を渡渉して対岸に渡ればよいのであり、それが可能であることが報告されているところ、本件事故当時、それが不可能であることを窺わせる証拠はない。)から、右事実をもつて、亡哲男の過失割合を軽減すべきではない。

以上の次第で、原判決が右第一ないし三の各点について誤つた評価をして、亡哲男の過失割合を三割と判断したことは失当である。

第三被控訴人らの附帯控訴の理由一ないし五はいずれも争う。

(被控訴人らの主張)

第一控訴人国の主張に対する反論

一  控訴人国は、本件吊橋に関して支出した本件費用は、地方財政法一六条の「補助金」であることを強調する。しかし、地方財政法上の「補助金」か「負担金」かは、明確に区別されておらず、「補助金」であるからといつて国の右主張のごとき性質のものとは限らないのである。その上、前記最高裁判所昭和五〇年一一月二八日判決によれば、「補助金」か「負担金」かによつて国家賠償法三条の「費用負担者」であるか否かが決せられる訳ではないのである。

控訴人国は、いわゆる補助金行政の広範に及ぶ現状を前提として、補助金交付を損害賠償責任の成立根拠とすることは、国の財政を圧迫し、国の財政を消極的なものとし、ひいては国民に不利益を及ぼすと主張する。しかし、本件については、国の責任を肯定することが、補助金交付の全ての場合に国の責任を認めることにならないことは明らかである。けだし、国の責任の有無は、当該補助金が交付された理由や目的、交付された事務の内容、補助金の性質や多寡などを総合して判断されるからである。

二  控訴人国は前記最高裁判所の判決を援用して自己の責任のないことを主張するが、それは右判旨を誤解するものであつて、右判旨を正読すれば、むしろ国の責任が裏づけられるものである。

控訴人国が右主張の理由とするところは、要するに本件吊橋の補修に関する国の費用負担の割合が県の四分の一にすぎない点にある。

しかし、控訴人国の右主張は、国が現実に交付した補助金の額の割合という形式的一面にのみいたずらに拘泥した議論であつて、補助金交付の趣旨・目的・役割等という実質的観点を没却した空論である。前記最高裁判所の判決においても、当該事案について国が国家賠償法三条一項の費用負担者に該当するか否かを判定するに当つて、単に補助金の割合という観点のみによつているのではないことは一読して明らかである。右最高裁判所判決は、国家賠償法三条一項の費用負担者につき、当該補助金の趣旨・目的・役割を詳細に分析していることに注意すべきである。そこでは、控訴人国が主張する設備費用の割合は、右判定をなすに当つての単なる一つの目安としての役割を果しているにすぎない。右最高裁判所判決の事案と本事件とを対比検討してみれば、補助金交付の趣旨・目的・役割は全く同一であるのに対し、偶々補助金交付の割合に彼我多少の差異があるにすぎない。したがつて、その点のみを理由として「費用負担者」であるか否かを区所することは、極めて不合理で、被害者保護の観点から彼我を区別する理由は全くないのである。

なお、控訴人国は、国が補助金を交付する場合一律的に「費用負担者」と認められることは、結果的に妥当でない旨主張する。

しかし、原判決は、決してそのような一律的な適用を主張しているのではないことは明らかであつて、控訴人国の右主張は的はずれである。

第二附帯控訴の理由

一  逸失利益について

被控訴人らは、原審において亡哲男の逸失利益がその昇給等を考慮して算定すると、一億二一九九万六三〇九円にのぼるが、そのうちの内金を請求すると主張したところ、原判決は亡哲男の給料の昇給分を全く考慮せずに、逸失利益を算定した。しかし亡哲男の経歴や同人の父亡重雄が神港ケミカルタンク株式会社の元専務をしていること並びに同社の給料の昇給率を考え合わせるとき、逸失利益の算定に、昇給分を考慮しないのは不当である。

二  葬祭費、墓碑建立費について

被控訴人まさゑ及び亡重雄に各五〇万を認めるのが相当である。

三  慰謝料について

亡哲男に二〇〇万円の慰謝料しか認定しなかつた原審の判断は明らかに低すぎる。人生これからというときに若くして死んだ亡哲男の無念を思うとき、同人に一〇〇〇万円の慰謝料を認めるのが妥当である。

四  弁護士費用について

弁護士費用総額は五〇〇万円とするのが妥当である。

五  過失相殺について

原判決は、警告板の文言がメーンワイヤーの破断の危険を端的に表現するものではないこと、大杉谷登山者の間では、吊橋の通行制限を無視しこれを越える人数で渡橋することが日常化していたこと、さらには当時本件吊橋の渡り口附近は、渡橋の順番待ちの人々で混雑状態にあつたことを認めながら、それでもなお、「亡哲男としては、先行する者らが渡橋し終るまで自らの渡橋を差し控え、後続の者らが自分の後に続いて渡橋することに対しては前記警告板や三人ずつ渡る旨の打ち合せ等を理由にこれを制止することは可能であつたと考えられる」として右過失相殺を認めたのである。しかしながら亡哲男にかかる行為が到底期待し得なかつたことは明らかである。いうまでもなく、過失相殺の認められる根拠は、損害の公平な分担である。ところで、ワイヤーロープが正常な状態であれば、本件のごとく一〇人程度の荷重では到底切断しなかつたのであり、また、控訴人三重県は一七年間これを取り替えず、その間にわずか一度だけ民間業者を通じて杜撰な点検をし、曖昧な表現の警告板を建てたにすぎない。一方、本件吊橋のある大杉谷登山コースは、登山専門家でない一般の老若男女が訪れるハイキングコースとして知られ、亡哲男の属する「山と友の会」は可能な限り十全と考えられる準備をして、大杉谷登山コースに臨んだのである。また、当日の本件吊橋の渡り口付近の混雑状態などの事情を勘案すれば、公平な損害の分担という観点からも、亡哲男に過失を認める理由はない。

仮に、過失相殺がやむをえないこととしても、本件のごとき一部請求においては、一部請求額についてではなく実質損害額全体について過失相殺がなされるべきである。

当事者双方の証拠関係は次のとおりである。<略>

理由

一  当裁判所は、被控訴人らの本訴請求中、控訴人らが連帯して被控訴人赤松まさゑに対し、金二四五一万一八五三円、被控訴人長沢重子、同赤松雄子、同藤本稔子及び同西和子のそれぞれに対し、各金三〇六万三九八一円宛並びに右各金員に対する昭和五四年九月一五日から各支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める請求は正当として認容すべきであるが、その余の請求は失当として棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は、左記に付加するほか、原判決理由説示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決二一枚目裏一〇行目「大木孝子」とある次に「、当審証人吉住友一、同古戸明」を加え、同一一行目の「というより」から同一二行目の「いうべき」までを削除し、同一二行目から同一三行目にかけて「スカートやヒール靴をはいたまま」とあるを「小学校の高学年の児童を同伴した家族連や登山馴れのしない若い女性」と、同二六枚目表四行目に「八号」とあるを「一八七号」と、同二八枚目表四行目の「吉永龍二」を「吉永龍次」と、同三一枚目裏三行目の「一〇分の三」を「一〇分の四」と、「一〇分の七」を「一〇分の六」と、同六行目の「三一六〇万二四一一円」を「二七〇八万七七八一円」と、同七行目の「二八万円」を「二四万円」と、同八行目の「一四〇万円」を「一二〇万円」と、同九行目「二八〇万円」を「二四〇万円」と、同三二枚目表一行目の「一九五八万一二〇五」を「一六七八万三八九〇円」と、同三行目の「二〇〇万円」を「一六〇万円」と、同五行目の「二一五八万一二〇五円」を「一八三八万三八九〇円」と、同一一行目の「二八七七万四九四〇円」を「二四五一万一八五三円」と、同一二行目の「三五九万六八六七円」を「三〇六万三九八一円」と各訂正する。)。当審で取り調べた新たな証拠調べの結果によつても右認定判断を左右するに足りない。

1  控訴人国の国家賠償法三条一項に定める費用負担者としての責任について

<証拠略>によれば、本件吊橋(堂倉堰堤前吊橋)は吉野熊野国立公園大杉谷線道路(歩道、以下「本件道路」という。)内に位置するものであるところ、本件道路は、昭和三八年三月九日厚生省告示第九六号により自然公園法一二条一項に基づき、吉野熊野国立公園の公園計画の一部として、起点大台ヶ原、終点千尋滝とする道路として計画決定され、同日同省告示第一〇二号により、同条項に基づき大台ヶ原千尋滝線道路(歩道)事業として事業決定がなされたが、その後、右公園計画は昭和四七年九月一六日環境庁告示第二一号により計画の一部が変更され、起点大台ヶ原、終点宮川第三発電所となり、それに伴い同日同庁告示第二四号により大杉谷線道路(歩道)事業として事業決定がなされたものであること、本件吊橋は昭和三七年頃、控訴人三重県が宮川第三発電所の建設に際し、工事関係者の通行の用に供するために架設し、三重県企業庁において管理してきたが、昭和四三年本件道路のコース一部変更に伴い右吊橋がこれに組み込まれ、以来控訴人三重県(観光公園課)においてこれを管理してきたものであること、控訴人三重県は昭和三八年三月六日付をもつて、控訴人国に対し、右道路事業に関し事業の執行承認申請をなし、同年四月一一日厚生省収国第六二九号をもつてその承認がなされたが、その後別紙事業執行一覧表2ないし10のとおり九回にわたり承認事項の変更申請をなし、いずれもこれが承認されたものであること、控訴人三重県は別紙補助金交付一覧表1ないし11のとおり一一回にわたり合計金八五三五万二〇〇〇円の事業費のうち控訴人国から半額に相当する金四二六七万六〇〇〇円の補助金の交付を受けて本件道路(歩道吊橋、木橋)の架設、補修などの工事をしていること、控訴人三重県は本件吊橋について<1>昭和四三年一月二〇日から同年三月三一日までの間に事業費金二七万一九八四円を、<2>昭和四八年七月、八月に事業費金八万八七八九円を、<3>昭和五〇年九月に事業費金一八万三〇七八円を、<4>昭和五四年三月に事業費金一二万九六一八円を費して補修工事をしてきたが、<1>の事業費金二七万一九八四円のうち金一三万五九九二円は別紙補助金交付一覧表4の決定通知による交付補助金一五〇万円の内金一三万五九九二円であつて、別紙事業執行一覧表4の事業執行承認に基づき、本件吊橋の補修工事の費用に当てられたこと、以上のとおり認められる。

ところで、公の営造物の設置または管理に瑕疵があるため国または公共団体が国家賠償法二条一項の規定によつて責任を負う場合において、同法三条一項が、同法二条一項と相まつて、当該営造物の設置もしくは管理に当たる者とその設置もしくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、その双方が損害賠償の責に任ずべきであるとしているのは、危険責任の法理に基づく同法二条の責任につき、同一の法理に立つて、被害者の救済を全からしめようとするためでもあるから、同法三条一項所定の設置費用の負担者には、当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者のほか、この者と同等もしくはこれに近い設置費用を負担し、実質的にはこの者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められる者であつて、当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止し得る者も含まれると解すべきであり、したがつて、法律の規定上当該営造物の設置をなし得ることが認められている国が特定の地方公共団体に対してその設置を承認したうえ、その設置費用につき当該地方公共団体の負担額と同等、もしくはこれに近い経済的な援助を供与する反面、右地方公共団体に対し法律上当該営造物につき危険防止の措置を請求し得る立場にあるときには、国は、同項所定の設置費用の負担者に含まれるものと解するのが相当であり、右の補助が地方財政法一六条所定の補助金の交付に該当するものであることは、直ちに右の理を左右するものではない。そして、自然公園法二五条によれば、地方公共団体が国立公園事業と執行する場合、その執行費用は、この地方公共団体が負担すべきものとされているが、同法一四条一項及び二項によれば、国が国立公園事業を執行すべきものとされ、地方公共団体は、国から承認を受けてその一部の執行をなし得るに止まり、また、同法二六条によれば、国が地方公共団体に対し執行費用の一部を補助することができる旨定められているところ、この補助金交付の趣旨、目的は、国が執行すべきものとされている国立公園事業につき、一般的に地方公共団体に対しその一部の執行を勧奨し、自然公園法の見地から助成の目的たり得ると認められる国立公園事業の一部につき、その執行を義務づけ、かつ、その執行が当該事業としての一定水準に適合すべきものであることの義務を課するとともに(なお、明治三〇年法律第三七号「国庫ヨリ補助スル公共団体ノ事業ニ関スル法律」一条参照)当該事業の実施によつて地方公共団体が被る財政的な負担の軽減をはかることにあるのであり、右の国立公園事業としての一定の水準には、当該事業が国民の利用する道路、施設等に関するものであるときには、その利用者の事故防止に資するに足るものであることが含まれるべきであることは明らかである(最高裁判所昭和五〇年一一月二八日判決、集第二九巻第一〇号一七五四頁参照)。

本件についてみるに、前記認定事実によれば、控訴人国は、自然公園法一四条二項により、控訴人三重県に対し国立公園に関する公園事業の一部の執行として本件吊橋を含む本件道路の架設補修などの工事を承認し、その際その事業費の半額に相当する補助金を交付し、控訴人国の本件道路に関する架設補修の費用の負担の割合は二分の一近くにも達しているのであるから、本件吊橋の設置管理のため控訴人国が控訴人三重県に交付した補助金の額が控訴人三重県の支出額に対し四分の一にすぎないものであつても、控訴人国は国家賠償法三条一項の適用に関しては、本件吊橋を含む本件道路の設置管理費用の負担者であるというべきである。

一般に国が、地方財政法一〇条ないし一〇条の四によつて地方公共団体に交付すべき負担金、委託金と、同法一六条によつて交付すべき補助金との相違は、前者においては、事務の開始が法律上義務付けられているのに対し、後者においては、地方公共団体に一応その開始が任されており、これに対応して前者においては国が費用の全部または一部の負担を義務付けられているのに対し、後者においてはかかる義務が法文上認められていない点にある。しかし、後者においても、国と地方公共団体との間に、補助金交付契約が締結されたときには、国は補助金給付義務を、地方公共団体は当該事業または事務の遂行義務を負うのであり、補助金が交付される特定の事業または事務についての、国と地方公共団体との具体的法律関係は前者のそれとそれ程異るものとはいえない。補助金の交付は地方公共団体に対し補助対象事業または事務を一定の水準で実施することを義務付けることを狙いとして行われるものであるが、自然公園法二六条は国が地方公共団体に対し補助金を交付することができるとし、「国立公園及び国定公園施設整備費、国庫補助金取扱要領」によれば、補助金の対象となる事業は、車道及び橋、歩道及び橋、園地、駐車場などの施設に限定され、国立公園の施設についていえば、当該施設が「利用者の事故防止に資するもの」であることが補助金交付対象事業の適格要件をなしているものであるから、本件吊橋を含む本件道路を「利用者の事故防止に資するもの」たらしめるためにも行われたものと認められる以上、控訴人国が本件吊橋を含む本件道路につき国家賠償法三条一項の費用負担該当者に当たるというべきである。以上の点に関する控訴人国の主張はいずれも採用できない。

2  控訴人三重県の国家賠償法二条一項の責任について

本件事故は、本件吊橋を同時に多人数の者が渡つたため発生したとはいえ、通常の用法に即しない行動の結果生じた自損行為によるものとはいえず、控訴人三重県の管理の瑕疵に基づく本件吊橋の安全性の欠除に起因するものというべく、控訴人三重県は国家賠償法二条一項により本件事故によつて生じた損害を賠償すべき義務があるものと判断するものであるが、その理由は、引用の原判決理由説示(同判決一九枚目表九行目から二四枚目裏三行目まで)のとおりである。控訴人らの右の点に関する主張は採用できない。

3  被控訴人らの被つた損害について

(一)  逸失利益について

当裁判所も亡哲男の逸失利益は原判決認容額である金四五一四万六三〇二円をもつて相当と認める。被控訴人らは、亡哲男の将来の昇給分を考慮すべきであると主張するが、<証拠略>によれば、亡哲男は昭和四四年三月甲南大学を卒業し、ただちに訴外西村株式会社に入社したものの、その後昭和四五年九月二六日訴外神港ケミカルタンク株式会社に出向、昭和五二年六月一日同会社に移籍したが、同会社は訴外丸紅株式会社が八〇パーセント、訴外西村株式会社が二〇パーセントの株式を有する会社であるところ、同会社では、ここ数年平均七パーセント以上の昇給率を示していることが認められるけれども、亡哲男の将来の昇給については、本件全証拠によつても相当の確かさをもつてその昇給率を推定することができないから、亡哲男の将来の昇給分を考慮しその逸失利益を算定することはできない。

(二)  葬祭費及び墓碑建立費について

亡哲男の年齢、職業、家庭構成などを斟酌すれば、本件事故と相当因果関係のある損害としての葬祭費及び墓碑建立費は、被控訴人赤松まさゑ及び亡重雄の両名に対し、原判決認容額各金四〇万円をもつて相当と考える。

(三)  慰謝料について

亡哲男の年齢、職業、社会的地位、家族構成その他諸般の事情を考慮すれば、本件事故と相当因果関係のある慰謝料は原判決認容額のとおり亡哲男の慰謝料は金二〇〇万円、被控訴人赤松まさゑ及び亡重雄固有の慰謝料は各金四〇〇万円、合計金一〇〇〇万円をもつて相当と認める。

(四)  弁護士費用について

本訴の事案の難易度、審理期間、その他認容額などを総合すると、弁護士費用としては被控訴人赤松まさゑ及び亡重雄について各金一六〇万円が相当である。

(五)  過失相殺について

本件事故の態様、すなわち本件吊橋の管理の瑕疵の程度、亡哲男の不注意の点など、かれこれ勘案すると、以上(一)ないし(三)の損害額について過失相殺の法理に照らし、その四〇パーセントを減殺するのが相当である。

二  よつて、控訴人らの本件各控訴は一部理由があるから、民訴法三八四条、三八六条に従つて原判決を主文第一項のとおり変更し、被控訴人らの本件附帯控訴は理由がないから民訴法三七四条、三八四条に従つてこれを棄却することとし、訴訟費用(附帯控訴費用は除く。)の負担につき同法八九条、九二条、九三条、九六条を、附帯控訴費用の負担につき同八九条、九三条、九五条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 大野千里 田坂友男 阪井いく朗)

事業執行承認一覧表

番号

事業執行承認申請年月日

事業執行承認年月日・番号

1

昭和38年3月6日

昭和38年4月11日

厚生省収国第629号

2

昭和39年8月4日

昭和39年9月8日

厚生省収国第1768号

3

昭和40年10月19日

昭和40年11月15日

厚生省収国第2614号

4

昭和43年1月9日

昭和43年1月25日

厚生省収国第205号

5

昭和44年1月6日

昭和44年2月4日

厚生省収国第468号

6

昭和44年11月12日

昭和45年1月9日

厚生省収国第8号

7

昭和45年11月24日

昭和46年1月8日

厚生省収国第48号

8

昭和47年2月9日

昭和47年3月7日

環自計許第87号

9

昭和48年1月29日

昭和48年2月28日

環自計許第41号

10

昭和50年2月15日

昭和50年4月12日

環自計許第74号

補助金交付一覧表

番号

補助金交付申請年月日

事業費

交付決定通知または交付確定通知年月日

補助金

1

昭和37年11月9日

千円

4,000

昭和37年11月28日

厚生省三国第2097号

(決定通知)

千円

2,000

2

昭和39年5月27日

2,000

昭和39年9月11日

厚生省収国第1809号

(決定通知)

1,000

3

昭和41年3月1日

(事業内容変更申請)

11,000

昭和41年3月14日

厚生省収国第303号

(事業変更承認通知)

5,500

4

昭和43年1月9日

3,000

昭和43年1月20日

厚生省収国第187号

(決定通知)

1,500

5

昭和44年1月6日

3,000

昭和44年1月10日

厚生省収国第8号

(決定通知)

1,500

6

昭和44年11月12日

3,000

昭和45年4月30日

厚生省発国第62号の1

(確定通知)

1,500

7

昭和45年度

(事業年度)

7,000

3,500

8

昭和47年2月9日

9,000

昭和48年2月9日

環自計第6号

(確定通知)

4,500

9

昭和47年2月22日

2,352

昭和47年4月26日

環自計第200号の1

(確定通知)

1,176

10

昭和48年1月27日

6,000

昭和49年2月15日

環自計第645号

(確定通知)

3,000

11

昭和50年2月10日

35,000

昭和51年3月1日

環自施第20号

(確定通知)

17,500

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